VOL.15:言葉の大切さ

 私には忘れらない苦い思い出があります。小学校に入る前の頃の出来事です。

その日は幼馴染みのまーちゃんの誕生日です。

呼ばれた私はプレゼントを持って行きました。

50年も前の事ですが、メゾネットタイプの町営住宅でした。

2階で遊びながらケーキを楽しみに待っていました。

 わたし  「今日は他に誰が来るの?」

 まーちゃん「〇〇くん」

 わたし  「えー、なんで呼んだの?」

 まーちゃん「だって来たいって言うから」

 わたし  「ふーん(また自慢したり、威張ったりするからやだなー)・・」

そうこうしていると下から「まーちゃんあっそぼー」と〇〇くんの声がします。

1回目は冗談で無視しましたが、すぐに「まーちゃん遊ぼー」と。

何度も無視するほど意地悪ではない私たちは

「入んなー」と言いました。(方言?)

でも、いつまで経っても〇〇くんは来ません。私とまーちゃんは、

「2階だよ、入っていいよー」と大声出しました。

でも上がってきません

不思議に思った2人は下に降りて行きました。

そこには誰も居ませんでした。

ただ、小さなプレゼントの箱だけ玄関にありました。

「なんで帰ったのかな?」

「用事でも出来たんじゃない」

〇〇くんを好きじゃなかった私は、良かったー帰ってくれてとも思いました。

その後、誕生日ケーキを食べて楽しく遊んで帰りました。

何日か経ったある日、〇〇くんが引っ越したと聞きました。

まーちゃんは引越す時に会えて、

何で誕生日の日に家に入らなかったのかを聞いたところ、

「だって大きな声で『帰ってー』て言うから帰ったんだよ。」

と悲しそうに言ったそうです。

「入ってー」が「帰ってー」に聞こえたようです。

聞き間違い・・・、言い方が悪かった?・・・

小さい私は、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

引っ越しするから最後の誕生日会に来たかったのだろうに、

結果的に追い返してしまった。

「まーちゃん、〇〇くんはどこに引っ越したの?」

「知らない、違う町だって言ってた」

小さい私でも、もう会えないことは理解できました。

言葉で人を傷つけることがある。自分がそんなつもりがなくても。

「はっきり聞こえるように呼べなくてごめんね。」

そう言えていたなら忘れ去られた思い出だったのかもしれません。

コメントを残す